すべてが圧巻@映画『mother〜母なる証明』
冒頭。そしてラストシーン。それだけでも、ポン・ジュノ監督の才能が「ただごとでない」ということをあらためて確認する。その斬新な美しさと、気が遠くなるほどの衝撃。そして、全編を通じてみなぎるそのクリエイティブ力にいつものように、うちのめされる。
待ちに待ったポン監督の新作『mother〜母なる証明』を先日、公開早々に鑑賞。
期待を裏切らない、だけでなく「期待とはまた違う角度」から攻め込まれた快感。
ポン・ジュノ監督は、さらにワタシらの想像を超える新・地平へとその一歩を踏み出した気がする。
かねてより温泉でも、もっとも好きな韓国映画監督のひとりとして語らせていただいているポン監督。2008年には3監督によるオムニバス映画『TOKYO!』があったが(あれは彼にとってはかるーくジョギングした感じで作られた作品でしょうけど。)、本格長編としては2006年の『グエムル〜漢江の怪物』以来。映画がはじまる前には思わず館内で「待ってました!」と声を出したくなるほど![]()
ミステリー要素のあるストーリーなのでその物語については多くは語れないですが、簡単に言えばキム・ヘジャさん演じる「母」が、殺人を犯したとして逮捕された「息子」のために、その事件の真実を追い、狂ったようにその母性を爆発させていく話である。
(有名傑作『殺人の追憶』のように監督が得意とする「ミステリー」の要素を、「母と子」の親子愛の物語の中、ここまでの絶妙な「塩梅」で機能させた手腕にも脱帽。「ヒューマン・ミステリー」という言葉が映画HPにもでているが、まさにヒューマンな機微と、卓越したミステリーの絶妙な融合。このあたりが、ポン監督ならではというか、ポン監督にしかできないのよね〜。)
いつも、彼の(マジ系の)映画を見ているとその間中、ずっと心臓の下のあたりがぎっゅと締め付けられるような感覚があるのだが、今回もその感覚が上映中つづいた。文字通り、心が痛いぐらいに揺さぶられる感覚。
また、ポン監督作であると同時に、この主役の母役を演じる「キム・ヘジャ」さんが、監督の映画でどのように「なられる」のかにワタシはとても興味があったんすよね。超ベテランの大スターで、韓ドラの人気作の中でも個性にあふれるお母さん役やおばあさん役(かなり重要な役ばかりですが)をやられている彼女の姿を幾度となく拝見しているけれど、ワタシの中で彼女の演技というか、その個性というのが、いわゆる多くの「ベテラン」系の女優さんの中でもとにかく「独特」で、演技のはしばしまで見逃せない感じだったんすよ。語弊があるけど、ものすごく演技者としての知性を感じるのと背中合わせにどっかが「オカシイ」感じつーかね。(面白い=の「おかしい」ではなく。)
映画をみたあと、なにかのインタビュー記事でポン監督がキム・ヘジャさんについて語っている中で、いつもキム・ヘジャさんをドラマで見ているときに彼女のなかに「狂気」を感じていて、その部分をこの映画で引き出したかった、というようなくだりがあり、その一文を見たときに「そうそうそうなんですよぉぉ!!」と尊敬する監督と「同意見」の目線でヘジャさんを捕らえていたことに至極幸福感を覚えたのだが。(それは置いておいて)とにかく、この作品で天才ヘジャさんの「新境地」というか「あんまりあけすけに見せないようにしていた部分」を正面にぐいっと引き出し、さらに女優人生を輝かせ(各賞総なめでしたもんね〜)たこともすばらしいと思った。ヘジャさん、かっこよかったっす!
もちろん、へジャさんだけでなく、その他のメンバーも関しても、ポン監督ならではの魔法の役者使い、「使い方の妙」がほとばしっていましたな。もうひとりの主役、ヘジャさんの「息子」役を演じられたウォンビン氏だが、いやー、よかった
彼の起用も監督が「ぜひ彼に」とのオファーがあったらしいが、まさにどんびしゃ。役得な役。
母にとっては、気になって仕方ない、いつも目が離せない、溺愛されている可愛い「息子」トジュン役。
美しいし、悲しい。美しいから、哀しい。(余談ですがワタシも大好きな
カン・ドンウォン氏が映画界でこの「ゾーン」にいち早く行っちゃってましたけど、このゾーン、まだまだ「空き」があると思う。ウォンビン氏、ここの「ゾーン」にハマってます。すごくいいっす〜。byわかる人だけわかってねコメント
)
彼が演じるトジュンは知的障害を抱えていて、もう、世話が焼けるたいへんな子なんすよ。だからいつも母は彼のことが気が気でならない。片時も目が離せない。韓国作品では「オンマ」の母性が強烈に描かれることが多いけど、今作ではこの「息子」のキャラクターゆえさらなる母と子の「濃密な絆」に説得力が増して物語に厚みがでてくるんですけどねー。もう、こういうところもすごいんだけどさっ!
ピュアな子鹿のような瞳、寝起きシーンの寝ぐせの付き方すら秀逸![]()
ウォンビン氏にとっては除隊後の初作品で、5年ぶりの作品である本作。先日の話題ではないが「韓流四天王」のひとりとしてのいろいろな「呪縛」もあったと思うのだが、この作品で、完全に彼はその呪縛から解き放たれたという気がした。そのために5年という歳月は必要だったとナットクできたし、この作品と出会えた幸せは役者冥利に尽きるものだったように思う。今後の作品も楽しみです![]()
とにかく一緒に見に行った夫(辛口批評家)ともども、エンディングのタイトルロールがでるときには他の観客の皆さんに邪魔にならないように小刻みに絶賛拍手。音楽も最高。もーすごいすごい! やっぱりポン監督は世界のポン!
韓国だけでなく海外でも評価の高い監督だけに、逆にその「プレッシャー」も相当だと思ったのですが、そんなことはものともせずに、さらなる創作力のジャンプを見せてくれたその「ハート」の強さ。才能の濃密さ。
まさに監督のファン冥利に尽きるよろこび。そしてクリエーターとしての刺激をいっぱいもらえたなぁぁ。ありがとう、監督!![]()
鑑賞後、こんな風に熱く感想を語り飛ばしながら渋谷の台湾料理屋で腸ヅメをつまみに飲むビールのうまかったことうまかったこと![]()
外は氷雨。だけど、キモチは感動でポカポカ。
とにかく、ワタシにとっては、すべてが圧巻でした。
ちなみに邦題である「母なる証明」っていうフレーズは個人的には蛇足。
「mother」=「母」の「母」たる大きなエネルギーに、多くのみなさんが包まれて欲しいと思います。
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